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肘の痛み

【2月29日】テニス肘(上腕骨外側上顆炎)について

「テニス肘」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。実際にテニスをしていなくても発症することが多く、日常生活や仕事にも大きな影響を与える疾患です。正式名称は「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」といいます。

今回は、テニス肘の原因や症状、診断、治療法、そして予防のポイントについてわかりやすくまとめます。


テニス肘とは?

テニス肘は、肘の外側に痛みが生じる疾患です。主な原因は、手首を反らす筋肉(特に短橈側手根伸筋:ECRB)の使いすぎによる腱の変性です。

物をつかんで持ち上げる、タオルを絞る、パソコン作業を長時間行うなど、手首を繰り返し使う動作によって負担が蓄積し、腱の付着部に微細な損傷が起こります。

名前に「炎」とついていますが、慢性期ではいわゆる炎症というよりも、腱の変性(angio fibroblastic dysplasia)という状態が中心であることが知られています。


どんな人に多い?

一般住民の約1〜3%にみられ、特に40〜60歳代に多いとされています。男女差はほとんどありません。

リスク因子としては:

  • 手首を反らす動作や前腕の回内・回外動作の反復
  • テニスなどのラケットスポーツ
  • 重い物を扱う仕事
  • 肥満
  • 喫煙
  • 肩の腱板断裂
  • ステロイド注射の繰り返し

などが挙げられます。

テニス選手では30〜50%に発生するとされ、特にアマチュアに多いことも特徴です。


主な症状

代表的な症状は「肘の外側の痛み」です。

特に次のような動作で痛みが強くなります。

  • ペットボトルのふたを開ける
  • タオルを絞る
  • フライパンを持ち上げる
  • ドアノブを回す
  • パソコンのマウス操作

初期は動作時のみの痛みですが、悪化すると安静時にも痛みが出ることがあります。


診断方法

診断は主に問診と診察で行います。

代表的なテスト

  • Thomsenテスト:手首を反らした状態で抵抗をかける
  • 中指伸展テスト:中指を伸ばして抵抗をかける
  • Chairテスト:肘を伸ばしたまま椅子を持ち上げる

これらで肘の外側に痛みが出れば、テニス肘が疑われます。

画像検査ではMRIや超音波検査が用いられることがありますが、画像所見だけで診断は確定せず、臨床症状との総合判断が重要です。


治療法

テニス肘の治療の基本は保存療法です。約70〜90%は1年以内に自然軽快するとされています。

① 生活指導

  • 痛みの出る動作を避ける
  • 物を持つときは手のひらを上に向ける(回外位)
  • 負担の大きい作業を調整する

完全安静ではなく、「負担を減らす」ことが重要です。


② 薬物療法

  • 湿布や塗り薬(NSAIDs)
  • 必要に応じて内服薬

短期的な痛みの緩和には有効ですが、長期的な改善効果は限定的です。


③ 装具療法

テニス肘バンドや手関節スプリントを使用し、腱への負担を軽減します。

症状の緩和には役立ちますが、長期予後を改善するという明確な証拠はありません。


④ リハビリテーション

非常に重要なのがストレッチと筋力強化です。

  • 手首伸筋群のストレッチ
  • 段階的な筋力トレーニング
  • 肩や体幹を含めた全体的な機能改善

腱の修復を促進する効果も期待されています。近年ではリハビリの有効性が高く評価されています。


⑤ ステロイド注射

即効性がある一方で、長期的効果は乏しいとされています。

さらに、繰り返し注射すると腱断裂や靱帯損傷のリスクが高まるため、強い痛みで日常生活に支障がある場合の単回使用が推奨されます。


⑥ PRP療法・体外衝撃波療法

  • PRP療法:自己血液から抽出した成分で組織修復を促進
  • 体外衝撃波療法(ESWT):刺激により疼痛緩和と再生を促す

慢性期の症例で選択されることがありますが、保険適用や有効性には一定の制限があります。


手術が必要になるケース

保存療法で改善しない症例は約5〜10%です。

慢性化し、腱の変性が進行している場合は手術が検討されます。

手術の種類

  • 直視下手術
  • 関節鏡視下手術

現在は鏡視下手術が広く行われており、関節内の病変も同時に確認・治療できるメリットがあります。

術後は早期からリハビリを開始し、段階的に筋力を回復させます。


病期に応じた治療が重要

テニス肘は、

  • 急性期(炎症・微細断裂)
  • 亜急性期(修復可能)
  • 慢性期(変性・瘢痕化)

と病期によって状態が異なります。

急性期は安静中心、
亜急性期はリハビリ中心、
慢性期は手術も検討、

と段階に応じた対応が重要です。


予防のポイント

  • 正しいフォームの習得(特にテニス)
  • 作業環境の見直し(キーボードやマウスの高さ)
  • 手首だけでなく肩・体幹の強化
  • ストレッチ習慣の継続
  • 使いすぎを避ける

「痛みを我慢し続けない」ことも大切です。


まとめ

テニス肘は中年期に多い肘の使いすぎによる障害です。多くは保存療法で改善しますが、適切な時期に適切な治療を行うことが重要です。

特にリハビリテーションの役割は大きく、単なる安静ではなく、正しい負荷管理と運動療法が回復の鍵になります。

もし肘の外側に違和感や痛みを感じたら、早めに医療機関で相談しましょう。悪化を防ぎ、早期回復につながります。

引用文献:小笹泰宏、上腕骨外側上顆炎、日手会誌(J Jpn Soc Surg Hand), 第 41巻 第3号 155-162,2024

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